第504号(1997年6月15日号)


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《連載コラム・視点》全域フリーゾーンに反対する勢力

 「沖縄全域をフリーゾーンにすべき」という方針が、六月十二日、東京で開かれた「産業・経済の振興と規制緩和等検討委員会」(田中直毅委員長)の会合で決まった。

 歓迎すべきである。

 ところが、県内の日刊紙「沖縄タイムス」によると県経済界が反発しているという(六月十三日付朝刊一面トップ)。

 どういうことだろう。

 地元経済界からは委員会に対し「沖縄の実状をわかっていない」など反発が広がっているという。

 いったい経済界とはだれのことだろう。

 記事には、

 《沖国大の富川盛武教授が「全域をフリーゾーンにすると関税がなくなり、外国からどんどん安い品が入る。国際的に劣位にある県内の製造業、農業は壊滅的な打撃を受ける」「沖縄の経済の実態を知らない議論だ」》

 《琉球銀行の牧野浩隆監査役は「暴論としか言いようがない。人、物、金、制度が本土と隔離されることになり、文化、教育の隔離であり、県民の支持を得られるとは考えられない。県内企業への影響どころか、ここまで来ると経済問題ではすまされない」と強く反発》。

 《一方、知名洋二県経営者協会長は数少ない賛成派の一人。「個人的には規制緩和よりも沖縄向けの規制撤廃が必要と考えている。企業にとっても競争は必要。県内企業には危機感が生じるかもしれないが、それをどう脱皮するかだ」》

 の三人の経済界のコメントがある。

 このうち、富川、牧野の両氏は学者・評論家であり、経済界ではない。ホントの経済人である知名さんはさすがに、賛成している。

 不思議なのは経済人である経営者協会の会長が賛成しているのに、一歩も二歩も実務から遠い学者のコメントがなぜ見出しとして大きくとられるかだ。

 筆者自身は全島フリーゾーンに諸手を挙げて大賛成である。基本的に観光業界は沖縄ツーリストの東良恒会長が言うように「全域フリーゾーンにすれば世界の航空機が行き交い、一大観光地になる」のは間違いない。

 また、貿易業界は県貿易協会の崎原永広専務理事が「一国二制度は世界の常識。外国船のインセンティブになるようにフリーポートをつくれ」とややニュアンスは異なるが古くから主張している。

 わしたショップの宮城弘岩専務も賛成派だ。宮城氏は古くからのフリーゾーン推進派であり、工業連合会の専務理事のときも県内製造業はフリーゾーンの導入で強化されると主張してきた。

 学者の中にも、例えば最近、沖縄公庫の副理事長に就任した嘉数啓氏は「全島フリーゾーン化」の論文を十年以上前だが、発表している。

 つまり経済界は観光業界も製造業も貿易業界も学者も全域フリーゾーン賛成派は少数ではないというのが筆者の実感だ。

 外国からの参入が困難な建設業なども全域フリーゾーンに反発する理由は見あたらない。むしろ、香港、シンガポール、開放経済が進む中国沿岸部を見れば建設工事は急増することが容易に予想でき、歓迎であろう。

 では農業・漁業はどうかというと、米やさとうきびはもともと政府が買い取ることになっており、打撃はない。切り花などは中国や東南アジアが追い上げているが、現に自由競争をしていて品質面で沖縄産は優位である。漁業は近海魚への影響はゼロで、遠洋もマグロなどはすでに全島フリーゾーンのグァムに水揚げしている実績があり、これもほとんど打撃はないのである。

 こう見ると沖縄タイムスの報道は何らかの勢力によってねじ曲げられているのではないかと疑われても仕方がないほど、異様な記事なのである。

 予想される何らかの勢力とは@おいこら式のやり方をいまだに続けている警察・入管・海上保安庁など取り締まり当局A現在日本政府に強力に保護されている復帰特別措置企業B海外との競争に逆立ちしても勝てないと見られている沖縄の金融機関C復帰前から沖縄フリーゾーンをできれば潰したいと画策し、実際に成功をおさめてきた通産省、大蔵省、沖縄開発庁など官僚機構D委員会自体のアリバイ工作、などである。

 これら行政機関や保護された企業は自由競争や自らの利権がなくなる状態を最も恐れている。世界の流れに逆行するこれらの勢力がまるで沖縄の代表のように報道されると、日々競争に明け暮れるまともな企業はたまったものではない。

 保護産業でも人件費を半減すれば今後、競争は可能だ。反発する理由はない。(本紙・渡久地明)


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ジェットフォイル、那覇=本部を結ぶ

 那覇と本部を一時間で結ぶ超高速船、ジェットフォイルが六月十三日、泊港に入港、出迎え式が行われた。沖縄マリンジェット観光(吉元政矩社長)が十三億七千万円で購入したもので、七月二十日から運航する。二百三十人乗り、時速八十三キロ、那覇=本部間を六十分、本部=伊江島間二十分、那覇=伊江島間を六十分で結ぶ。夏場(四月〜九月)は一日三往復、冬場(十月〜三月)は二往復。運賃は大人片道三千五百円、子供は千七百五十円。

 第三セクターの沖縄マリンジェット観光株式会社が運営するもので、ジェットフォイルは▼那覇と北部の間を高速、定時制を持った海上交通機関で結ぶことで県民、観光客の交通需要に応える。▼北部圏域の活性化と振興を促進。▼観光リゾート産業振興の一翼を担う。の三点を目的としている。

 那覇は泊港北岸、本部町はエキスポ・ポート、伊江島は伊江港を発着する。

 船名は「マーリン」でカジキから取った。波の影響を受けず、船酔いをしないのが特徴。

 米国ボーイング社が開発し、ジェットフォイルと名付けた。川崎重工が製造、販売権を得ており、「ジェットフォイル」も川崎重工の登録商標である。

 沖縄ジェットマリン観光株式会社は〒九〇〇、那覇市前島三丁目二五番一号、とまりんビル一階、電話〇九八(八六九)三〇五九。予約センター〇九八(八六九)三〇五五。

《解説》広報宣伝をどうするか 北部での足確保も課題

 沖縄観光速報社は一九九〇年五月号に「海のジェット機・ジェットフォイル」というタイトルでジェットフォイルを紹介している。「時速八三キロで揺れない、那覇=本部間一時間」などの見出しが踊っている。

 初めて沖縄にジェットフォイルが紹介された記事である。その後、観光速報社は川崎重工の技術者を那覇に招いてジェットフォイルのセミナーを開き、長崎=博多間を運航しているJRのジェットフォイル「ビートル」に乗ってみた。参加した観光関係者は快適な船旅を体験して将来、沖縄に導入されたら観光振興にプラスになることを確認した。あれから七年、やっとジェットフォイルが実現したのである。

 ただ問題もあった。大消費地福岡から長崎のオランダ村までは鉄道、バス、マイカーと競合するがどう対抗するかである。

 これは今回の沖縄の場合も当てはまる。沖縄ではバス、マイカーがライバルだが、時間短縮というだけでジェットフォイルを使うかどうか。地元の人は物珍しさから一度は乗るだろうが、北部観光のために何度も利用するとみると甘い。時間的な自由のきくバス、自由とドライブの楽しいマイカー、レンタカーが有利なことは疑いない。

 ジェットフォイルは大人往復運賃六千三百円、子供往復三千百五十円、夫婦と子供二人の一家四人だと往復運賃だけで一万八千九百円。北部を観光するためにレンタカーを借りると六時間で七千円。食事に一人一千円使うと合計四千円。締めて二万九千九百円。ざっと三万円が必要。

 これに対しマイカーだとガソリン代二千五百円、食事四千円、合計六千五百円、帰りの自動車道料金千三百五十円(許田=那覇間)を入れても七千八百円に過ぎない。つまりマイカーはジェットフォイルの約四分の一の経費だ。むろんジェットフォイルには海を満喫するというマイカーにない魅力がある。この魅力をどう評価するかである。

 もう一つ問題なのは北部の観光魅力が極めて乏しいことである。水族館のある国営記念公園だけでは物足りない。北部の大自然や動植物を観察できるといってもジェットフォイルを利用するという理由には弱い。マイカーでも十分だからである。香港=マカオ間にも走っているが香港からはマカオのギャンブルに行く客でいっぱい。佐渡=新潟間も走っており、佐渡は観光資源が充実している。陸上での交通もある。つまり、利用するだけの有力な理由があるのだ。

 沖縄で当面困るのは本部エキスポ港から唯一の観光スポットである記念公園のエキスポビーチまで連絡の「足」がないことである。タクシーで往復することになるが、二百人前後の客をタクシーで一度に運ぶのは時間的にどうだろうか。七月二十日の就航までにはタクシーの動員体制など整備されるだろうが、ジェットフォイルが那覇に到着した時点では体制が出来ていない。急いで解決してもらいたい。苦情が出そうだ。でないと安心して利用できない。本土からの観光客も同様である。と くに団体客は致命的である。貸切バスを那覇から回すにはコストがかかる。

 第三セクターのマリンジェット観光(株)の設立目的に「北部の活性化と観光の振興」がある。そのためには名護、本部、今帰仁、大宜味、国頭、東、伊江の各市町村が企業を含めて受け入れ体制を充実させることが大事である。その時に沖縄マリンジェット観光株式会社がリードしてもらいたい。マリンジェット観光の果たす役割は大きい。

 地元需要の堀り起こしとともに忘れてならないのは観光客開拓である。長期的には北部の観光魅力の整備が必要だが短期的には観光客への広報が大事である。 ジェットフォイルが那覇に到着した際、地元の琉球新報、沖縄タイムスはともに朝刊一面で大きく報道したが本土各紙はなし。七月二十日の就航開始のときに記事にするのだろうが、本土メディアにとっては珍しくもなんともない。いまメディアの焦点は沖縄を離れて香港や中国問題、ガイドライン見直しに移っている。

 だが、観光客には沖縄にジエットフォイルがあって、沖縄の海を満喫できるという新しい魅力を是非とも知ってもらいたい。個人旅行が盛んになると予想されるのでジエットフォイルは需要に応えられると思うが、それにはマスコミの協力を得て直接消費者に訴えたい。しかし前述のようにそうも行かない。そこで業界紙誌を使って旅行代理店に周知徹底し、旅行代理店の手で消費者を誘導してもらう。つまり、業界紙誌を通した広報活動を積極的に展開することが非常に大事なことになる。 問題は多い。(渡久地政夫)


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沖縄で元気になって 動き出す高齢者の誘致作戦

 沖縄の長寿に注目してシルバー層を沖縄に誘致しようという試みが医療関係者、民間の電気通信会社などで組織するヒューマンネットワーク研究会(座長・石野福弥一橋大教授)で進められている。

 これまでにも旅行観光業界で健康大学などの取り組みは見られたが、研究会のメンバーが旅行業とは異なる顔ぶれで、高齢化社会をビジネスチャンスとして取り組み、厚生省などにも働きかけて制度として沖縄での高齢者の療養まで視野に入れているところが、これまでの健康ツアーとは大きく異なっている。

 すでに五月二十二日、山形県から五十代〜七十代の男女六人と看護専門家が来県し、パシフィックホテル沖縄で沖縄の食文化や歴史について学び、宮古島で実際に短期間沖縄の人と同じ生活を体験した。

 この間、毎朝血圧や採尿など健康チェックを行い、インターネットを使って郷里のかかりつけの医師や家族と動画で交信した。

 参加者は短期間で沖縄の料理に慣れ、帰ってからこれまでの自分の料理に「塩分が多い」ことに気がついたという。

 高齢者ビジネスは厚生省の新ゴールドプランなどの強い方針でデイケア施設が全国的に急増している。また、このようにしなければ高齢化社会に対応できないのも事実である。医療関係者によると厚生省の方針にしたがえば一定の利益が確保でき、各病院がこぞってデイケアや訪問看護に参入している状態だ。沖縄でも訪問看護やデイケアセンターの看板が目立つようになっているのはこのためだ。

 病院付属のデイケアセンターではお年寄りを送迎車で集め、体を動かすリクリエーションや地域の小学校の子供たちとの交流会などが開かれている。これと似たことをリゾート施設で行えば長期滞在の観光システムが成り立つというわけだ。そこで沖縄の気候や長寿県であるところが大いに注目されている。沖縄での数週間の療養に効果があることが判明し、部分的に保険の適用も可能となると、全国の旅行観光業界にとってもビッグビジネスに発展することは間違いない。

 さらに、通信分野ではSOS電話など、お年寄りが困ったときにボタンを押すだけでセンターとつながり、ケアするというビジネスがアメリカを中心に立ち上がっており、日本でも注目されている。自動車メーカーなども、道路での立ち往生など非常事態に対応するためにSOS電話を装備するアイデアが検討されている。

 同様にリゾートでのSOS電話やマルチメディアを活用して、常に家族と連絡が取れるようにしておけば、高齢者本人、離れている親族ともに安心でき、新たな通信ビジネスが展開できそうだ。

 研究会は厚生省などにも、今後成果をもとに提言していく方針で、うまく行けば医療関係者を巻き込んだ大がかりな長期滞在システムが沖縄を基地に誕生する可能性がある。(渡久地明)


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